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消える言葉、残る言葉 [09.02.20]

 父が世を去った。病の再発を知らされてから2年、自宅で療養しつつ、静かにその日を準備してきた。この半年は気道確保のため声を出せなかったから、やりとりはメモ書き。その日その日のちょっとした連絡から、「ありがとう」と感謝を伝えるものまで、おびただしい数の紙片が、手元に残った。
 初七日を済ませた頃、長男に自主勉強としておじいちゃんのことを書いたら、と薦めた。そんな哀しいことをなぜと問う彼に、それが人間にできるいちばんすてきなことだからと答える。言葉があるから、ぼくたちは今はいない昔の人の教えを受けることができるし、きっと会うこともないだろう遠い国の人の思いを知ることもできる。
 言語学のスザンヌ・ロメインらによる『消えゆく言語たち』によると、世界には、およそ5000から6700の言語があるという。その多くはほんの少数の集団で使われている言葉。たとえばヒシュカリヤナ語は、既知の言語の中で唯一、文頭に目的語を置く言語というが、アマゾン川流域でわずか350人の話者を持つにすぎない。
 この100年、主要言語がすさまじい速度で拡張し、いまや100大言語で世界人口の90%を占めている。その陰で、どれだけの言語が失われてきたか。それはすなわち、それだけの数の文化や感性、生態系が失われてきたということだ。最後の話者は、その言語が支えてきたすべての世界とともに、この世を去る。マン島語最後の話者ネッド・マッドレルが、カトーバ・スー語のレッド・サンダークラウドが、コーンウォール語のドリー・ペントリースがそうであったように。
 父がつけていた闘病日誌がある。死の前々日の欄には、穏やかな体調や天候のことが書かれ、「今日くらいやったらほんまにうれしくて」とあった。ぼくは窓から、集落を、畑を、山並みを、空を見上げる。この世界を持てたことを、ぼくは感謝している。

by 小橋昭彦 : コメント (31) | トラックバック (0)

自然のオーケストラ [08.12.24]

 鳥の鳴き声が、周囲の環境によって違ってくるとは発見だった。ライデン大学のスラベッコーン博士が発表した論文によると、シジュウカラは、交通騒音のある都市部では、近隣の森に棲む同じ種と比べて、短く速く高い音程で鳴いていたという。似たような報告をベルリンのブラム博士もしていて、都市騒音の激しいところでは、小鳥たちが通常より大... 続きを読む
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月とクマムシ [08.11.27]

 夜の会議を終えての帰り道、足元の影に気づいて見上げると、ひんやり満月が浮かんでいた。あの月にクレーターを作ったのは天体の衝突だが、現在並みの頻度になったのは約38億年前。ひっきりなしの誕生時からゆるやかに減ったわけではなく、39億年前に一度、大変動と呼ばれる激しい衝突に見舞われた時期があったと考えられている。  科学... 続きを読む
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20世紀ファッションの文化史―時代をつくった10人 [08.11.16]

 楽しく、かつ刺激的な一冊。  ファッション業界に限らず、およそクリエイティブに関わっている人であれば、インスパイアされる箇所が多いことだろう。  あるものごとの歴史を取り上げるにあたって、人に焦点をあてるアプローチがある。このコーナーでとりあげてきた本の中でなら、たとえば『エレクトリックな科学革命―いかにして電気が... 続きを読む
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誤りを恐れない [08.10.30]

 もう一年近く前に出会って、いつかコラムにしたいと思いつつ、書けないできたネタを読み返している。ひとつは心理学の、ひとつは神経科学の研究からの報告。  コロンビア大学ミズーリ校のローラ・キング博士らによる報告は、副題に「後悔と、幸福と、成熟と」とある。そう、人はいつも、あり得たかもしれないもうひとりの自分のことを考え、... 続きを読む
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第三の消費文化論―モダンでもポストモダンでもなく [08.09.24]

 ポストモダン消費論、というのがあった。  1980年代から盛んに言われるようになった。当時日本でもブームになった記号論など、ポストモダン思想の見方を用いて消費を分析する見方だ。  間々田さんは、ポストモダン的文化の内容について、その特徴を次の3点にまとめている。  1.脱合理主義(合理主義的価値観を嫌い、非効率的・... 続きを読む
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一夫多妻制が長生きのコツ? [08.08.24]

Polygamy is the key to a long life - being-human - 19 August 2008 - New Scientist After accounting for socioeconomic differences, men aged over 60 from 140 coun... 続きを読む
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ニセの記憶でも行動に影響する [08.08.22]

Association for Psychological Science In fact, people can easily create false memories of their past and a new study shows that such memories can have long-term... 続きを読む
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海に流したメッセージの行方 [08.08.22]

News and Events | University of St Andrews As an eleven year old boy in 1985, Donald Wylie tossed a bottle into the Orkney sea, with a message asking its finder... 続きを読む
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薬はジュースで飲むな [08.08.22]

New reasons to avoid grapefruit and other juices when taking certain drugs Scientists and consumers have known for years that grapefruit juice can increase the ... 続きを読む
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ヒトの脳が進化した理由 [08.08.16]

Genome Biology | Full text | Metabolic changes in schizophrenia and human brain evolution Our findings, along with several previous studies, suggest that the ev... 続きを読む
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赤いユニフォームは判定で有利 [08.08.11]

Association for Psychological Science The psychologists found that when the competitors appeared to be wearing red, they were awarded an average of 13% more poi... 続きを読む
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メッセンジャーで6次の隔たりを確認 [08.08.08]

Planetary-Scale Views on a Large Instant-Messaging Network We find that the graph is well-connected and robust to node removal. We investigate on a planetary-sc... 続きを読む
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エイリアンが見る風景 [08.07.22]

NASA - NASA's Deep Impact Films Earth as an Alien World During a full Earth rotation, images obtained by Deep Impact at a 15-minute cadence have been combined t... 続きを読む
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視覚情報を伝達するタンパク質 [08.07.22]

Pikachurin, a dystroglycan ligand, is essential for photoreceptor ribbon synapse formation : Abstract : Nature Neuroscience We identified pikachurin, an extrace... 続きを読む
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フタバスズキリュウ発掘物語―八〇〇〇万年の時を経て甦ったクビナガリュウ [08.07.19]

 こちら丹波市でも恐竜化石が見つかって、以来ちょうど2年になろうとしているのだけれど、なんだか盛り上がっている。  盗掘などの心配があったため、一般に公開されたのは発表から半年たった昨年の1月だ。ティタノサウルス類ではないかと思われ、しかも全身の骨格がほぼもとのまま出てきそうな様子だという。  さっそく、発見者が「丹... 続きを読む
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異星の植物の色は緑に限らない [08.07.08]

赤,青,黒… 異星の植物は何色か F型星やK型星をまわる惑星の植物は,地球の植物と同じような色を基本としながらも,やや異なる色をしているだろう。F型星の場合,大量に降り注ぐ高エネルギーの青色光子の影響が非常に強いため,日焼けを防ぐ“日よけ”色素によって青色光を反射している可能性があり,だとすればその植物は青色に見えるは... 続きを読む
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現代版ノアの箱舟 [08.07.08]

Seeds of Future Agriculture Enter Doomsday Deep Freeze: Scientific American Millions of vital crop seeds will be buried deep within the frozen earth of Svalbard... 続きを読む
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流線形シンドローム―速度と身体の大衆文化誌 [08.06.29]

 こういう切り口があったか。みごとな文化論。  流線形、streamline。今でこそ何気なくつかっているこの言葉の誕生と流行を追っている。副題にあるように、もともとは「速度」に関連した物理用語であったものが、身体性を持ち、政治的な力さえ持つようになった。  嚆矢となるのは、1905年に『サイエンティフィック・アメリ... 続きを読む
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学校裏サイト―ケータイ無法地帯から子どもを救う方法 [08.06.27]

 ある調査によると、SNSなどのコミュニティサイトを利用したことのない保護者が3割という。しかし、出会い系はもちろん、学校裏サイトにしても、今問題になっているケータイサイトの多くは、コミュニティ系だ。保護者と子どもの間には、ネット利用においておおきな断絶がある。  おそらく親にとっては、学校裏サイトを探すことさえ難し... 続きを読む
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チンパンジーも、抱きしめ、口づけ、なぐさめる [08.06.18]

Study: Chimps calm each other with hugs, kisses For most folks, a nice hug and some sympathy can help a bit after we get pushed around. Turns out, chimpanzees u... 続きを読む
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人間の行動エリアは狭い [08.06.18]

Understanding individual human mobility patterns : Abstract : Nature We find that, in contrast with the random trajectories predicted by the prevailing Lévy fli... 続きを読む
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テレビ番組事始―創生期のテレビ番組25年史 [08.06.17]

 副題にあるように、テレビ放送が始まってからの25年間に放送された番組をたどった記録。同時代を生きた著者が、現場の様子を丹念に伝えている。  ひとつひとつの番組の裏舞台で行われていた苦労や、有名番組の思わぬ誕生秘話、配役の移り変わりなど、関係者へのインタビューも交え、生き生きとした様子が甦る。  貴重な記録だ。  志... 続きを読む
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心の科学―戻ってきたハープ [08.06.13]

 すべては戻ってきたハープから始まった。  カリフォルニア大学心理学部助教授による、超能力についての探求の旅。科学者にとって、超能力を研究することはある意味とても危険なことだ。「アッチの人になった」と学会から無視されかねない。  それでも彼女が超能力に関連する情報を集め始めたのには、理由がある。戻ってきたハープだ。 ... 続きを読む
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今、地方で何が起こっているか―崩壊と再生の現場から [08.06.12]

 朝日新聞紙上での連載をもとにまとめた書籍。  いま、地域を語るときに典型的に語られる二つの町がある。  夕張市と上勝町だ。「崩壊の現場」としての夕張市と、「再生の現場」としての上勝町。  この書籍もまた、ふたつの自治体をつないで語られる。  まずは全体像を振り返っておこう。  切り口は5つ。  限界集落をテーマにし... 続きを読む
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構造化するウェブ―ウェブの理想型を実現する技術とは [08.06.11]

 技術の背後には思想がある。岡嶋さんはそこに立脚している。  個々の技術について解説する書籍は多くある。それら技術が実現する社会について論じた書籍もある。  しかし、それらの間をつなぐ形で描かれる書籍は少ない。一読をお薦めしたい。  副題で触れられている「ウェブの理想型」とは何だろう。  「おわりに」にわかりやすく説... 続きを読む
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